日産スカイラインGT-R、一度は聞いたことがある車種名でしょう。クルマ好き、日産ファン、GT-Rファンなど多くのファンに愛され続けている名車のひとつです。初めてスカイラインにGT-Rの名が冠されたのは1969年に登場した3代目スカイライン。当時はスカイラインの高性能バージョンとして誕生しました。時を経て1989年8代目スカイラインから設定されたスカイラインGT-Rはレースでの使用も視野に入れた高性能ハイパフォーマンススポーツカーとして登場。以降、多くのファンを魅了し憧れる日産を代表する日本を代表するスポーツカーに成長しました。現在でもスカイラインGT-Rは日本のみならず世界中で高い人気を維持している名車です。
スカイラインの高性能版からスポーツカーへ
〈直列6気筒S20型エンジン時代〉
「GT-R」「R」などさまざまな愛称で呼ばれるGT-Rの経歴を振り返っていきましょう。1964年日本グランプリでポルシェ904の前を走るプリンス・スカイラインGT。この光景が「スカG伝説」となりスカイラインGT-R誕生のきっかけとなる出来事。その後スカイラインGTは日本グランプリで活躍し輝かしい成績を残しました。1968年、スカイラインが3代目へフルモデルチェンジされすぐにスポーツバージョン「2000GT」も販売されましたが、スカGを知る人たちからすれば物足りないスペックのマシンでした。多くのファンは高性能ハイパフォーマンスエンジンを搭載したスカイラインを待ち望み1969年ついに「日産スカイライン2000GT-R」が誕生します。
直列6気筒DOHC4バルブエンジン「S20型」は当時としてはハイパワーなエンジンでエンジン単体価格は70万円。「スカイライン2000GT-R」の車両本体価格が150万円でしたのでエンジンだけで車両本体価格の半分を占めていました。スポーツモデル日産スカイライン2000GTが当時86万円であったことを考えると相当高価なクルマであり価値のあるエンジンを搭載していた初代スカイラインGT-R。大人しい3ボックススタイルセダンにハイパフォーマンスなエンジンを搭載したスカイライン2000GT-Rはまさに「羊の皮を被った狼」。1972年にスカイラインがフルモデルチェンジを行い「ケンとメリーのスカイライン」のコマーシャルで有名になった通称「ケンメリ」に世代交代。翌年1973年にスカイライン2000GT-Rをラインナップ、エンジンは先代同様S20型直列6気筒エンジンを搭載していますがボディの大型化により重量が増加しサーキットを走ることなく、わずか4ヶ月総生産台数197台で生産が終了となります。ケンメリGT-R生産終了から16年もの間、スカイラインGT-Rは一時的に歴史が途絶えることになります。
〈直列6気筒RB26DETT時代〉
16年の時を経て1989年8代目スカイラインからスカイラインGT-Rが復活。このスカイラインGT-RがR32型GT-Rと呼ばれるスカイラインGT-Rです。全長4,545mm全幅1,755mm全高1,340mmのサイズでヨーロッパ勢のスポーツモデルに勝てるよう開発されたR32型スカイラインGT-Rはハイテクずくし。四輪マルチリンク式サスペンション、前後輪トルクを0:100から50:50まで自動的に無段階で変化させることができる電子制御トルクスプリット4WD「ATTESA E-TS」、四輪操舵システム「HICAS」などの電子デバイスを世界に先駆けいち早く導入。そして忘れてはならないスカイラインGT-Rを支える心臓「RB26DETT」エンジンによってハイパフォーマンス・ハイテクノロジーマシンになったのです。RB26DETTエンジンは2568cc直列6気筒DOHC4バルブセラミックタービンで過吸するツインターボエンジン。最高出力280PS最大トルク36.0kgmを絞り出しますがあくまでも自主規制によるスペック。全日本ツーリング選手権のレギュレーションに対応したRB26DETTエンジンはレース用にチューニングを施すと800PSを越えることもありました。組み合わされるトランスミッションは5速MTでハイパワーを最新テクノロジーで安全に楽しめる新生スカイラインGT-RがR32型だったのです。
1994年まで生産され、1995年にモデルチェンジを行いR33型スカイラインGT-Rになりました。全長4,670mm全幅1,780mm全高1,360mm。エンジンはRB26DETTを継承しましたが最大トルクを37.5kgmへパワーアップ。エクステリアやインテリアデザインを変更し若干のボディサイズをアップしています。1998年にR33型スカイラインGT-Rの生産を終了。1999年からR34型スカイラインGT-Rの販売が開始されます。全長4,600mm全幅1,785mm全高1,360mm。このR34型スカイラインGT-Rが「スカイラインGT-R」として最後のGT-Rになります。R33型で評価が良くなかったデザインとボディサイズを見直しスタイリッシュで存在感のあるデザインへ変わりました。引き続きRB26DETTエンジンを受け継ぎ精度を上げ最大トルクを40.0kgmまで向上。年代と世代を重ねる度に熟成とパワーアップをしたエンジン。それに伴いボディ剛性を高め、エアロパーツの装着、各種メカニズムの更新や強化をしていきました。2002年、ついにR34型スカイラインGT-Rの生産が終了。3世代にわたり13年続いたRB26世代スカイラインGT-Rは幕を閉じました。圧倒的なパフォーマンス、ハイパワー、スタビリティ、電子制御を備えた型式RとつくスカイラインGT-Rは名車となり、ポテンシャルが高く、耐久性のあるRB26DETTエンジンは現在でも名器と呼ばれるエンジンになりました。
名車・名器を手に入れる
大きく世代分けすると2000cc「S20」エンジン搭載時代と2568cc「RB26DETT」エンジン搭載時代に分けられます。S20時代は「スカイライン2000GT-R」モノグレード、RB26DETT時代は「スカイラインGT-R」、「スカイラインGT-R スペックV」、「スカイラインGT-R Mスペック」などさまざまなグレードを展開しています。中古車情報を見てみると最も手に入れやすい個体でも200万円程度、最終型(R34型)もしくはS20エンジンを搭載したモデルは1,500万円を越える価格が掲げられています。幅広い価格帯のスカイラインGT-Rの中でも今回オススメするのは「R34型スカイラインGT-R(ノーマル)」です。中古車市場にはノーマルグレードR34スカイラインGT-Rは2019年1月現在で20台弱出回っている状況で本体価格は約500万円~が一般的な相場のようです。
あえて標準モデルをオススメする理由は、素の状態でポテンシャルの高さを知ることがスカイラインGT-Rと長く付き合うことができるコツだと筆者は考えるからです。素の状態を知ることでエンジンの特徴、トランスミッションの特性、ボディ剛性、サスペンションの懐の深さなどスカイラインGT-Rというクルマ本来の実力を知ってから、もっとエンジン性能を上げたい、もっとコーナリング性能を良くしたいなど自分の好みに合うチューニングをしていくとスカイラインGT-Rに愛着が湧き、カスタマイズの楽しみが増え、チューニング効果を知るためにスカイラインGT-Rとドライブに出かけ、スカイラインGT-Rとの対話をしながら自分オリジナルのスカイラインGT-Rを育てることができるからです。歴史的な名車であるスカイラインGT-R、レース用として使うことを視野に入れた名器と呼ばれるRB26DETTエンジン、これらを手に入れられるのは現在中古車市場に出回っている今しかありません。ぜひこの機会にスカイラインGT-Rを検討してみてはいかがでしょうか。
伝説となるスカイラインGT-R
日本のみならず海外からも評価が高く人気が高いスポーツカー日産スカイラインGT-R。間違いなく日本の宝であり自動車史に残るモデルです。日本の技術、日産の技術力を世界に示したスカイラインGT-Rの功績はスカイラインGT-Rが消えたとしても語り継がれることでしょう。スカイラインGT-Rとしての歴史は2002年に幕を閉じましたがスカイラインから独立したGT-Rは2007年からR35型GT-Rとして今も歴史を刻み続けています。
[ライター/齊藤 優太]