レクサスLCは2017年に登場したレクサスのフラッグシップクーペです。レクサスのクーペにはすでにRCが存在していますが、RCよりも格上のクーペとして誕生しました。LCの車名の由来はラグジュアリークーペの略でその名の通り贅を尽くした質感の高い仕上がりが特徴です。ラインナップは自然吸気大排気量ガソリンエンジン、環境性能と走りを両立したハイブリッドモデルの2種類。バックオーダーを抱えるほどの人気で特別仕様車などの限定モデルも販売しています。国内のみならず海外からの評価も高いレクサスのニューフラッグシップクーペLC。2019年1月にはにはコンセプトモデルとしてオープンモデルLCコンバーチブルを発表しています。今回は世界中から注目されるレクサスLC人気の理由に迫ります。
LCから見えてくるレクサスの世界
レクサス自らがラグジュアリーフラッグシップクーペと謳うLCは全長4,770mm全幅1,920mm全高1,345mmのフラッグシップにふさわしいボディサイズ。低く長いボンネット、四隅に配置されたタイヤから力強い踏ん張りを感じることができます。くびれ部分が突き出るようなレクサスアイコンのスピンドルグリル、鋭い眼差しでシャープなヘッドライト、流線型のルーフライン、ミラー構造を取り入れたテールランプ、スピンドル形状をプレスラインで表現したリアまわりなど見るからにレクサスのアイデンティティを取り込んだ美しいスタイル。
このスタイルはコンセプトカーLF-LCを彷彿させます。コンセプトカーを市販することは技術的な面でも安全性の面でも難しいところがありますが、レクサスLCは可能な限りコンセプトカーに近い造形を再現しています。インテリアは二段作りのダッシュボード、液晶パネルと動くシルバーリングを使いシンプルでコンパクトにまとめられたメーター、スポッと収まるような形のシート、乗員を包み込むような全体造形が特徴的な室内。ドライバーズシートとパッセンジャーシートが区切られている作りになっており、ひとつの空間でありながら別空間のような世界を作り出しています。室内の質感に対するこだわりが強く、手に触れるところや目に見えるところにはレザーやアルカンターラを使い手触りの良い質感の高い仕上がり、彫刻のようなデザインを随所に取り入れ造形美を感じることができます。
インテリアカラーにはひとつの統一したカラーバージョンやビビッドな組み合わせのカラーもあり色使いは派手であっても落ち着くことができる室内空間としています。搭載される動力は2種類、V8 5.0L自然吸気ガソリンエンジンとV6 3.5Lガソリンエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドを用意。トランスミッションはガソリンエンジンモデルには新開発10速ATを組み合わせ、ハイブリッドモデルには4段ギアを組み合わせ疑似10段シフトを可能にするマルチステージハイブリッドを採用。
ドライブフィールはレクサスクオリティそのものですが、V8エンジンはアクセルを踏み込むとけたたましいサウンドを響かせながら背中をグイグイ押します。V6ハイブリッドはモーターアシストをブーストとして使う方向のセッティングにより鋭い加速をしてくれます。どちらにも個性があるセッティングやチューニングを施しサウンドを積極的に聞かせ、アシストとしてのモーターではなく動力源にモーターを使う新しい試みをしています。今までのレクサスモデルは「静」のイメージが強かったモデルが多くありましたがこのLCは「動」を体現しているレクサスです。車両重量は2000kgほどの重量ですがハンドリングは素直でキレがあります。重たいエンジンや重量がかさむハイブリッドシステムを搭載しているのにも関わらずこれほどまでにスパッとしたハンドリングを実現できているのは重量物を車体の中心に集める工夫をしているからです。
エンジンをフロントミッドシップに搭載するなど重量のコントロールを徹底していることがLCの走りを支えているのです。重量物を中心に集め、高い走行性能を実現する秘密は新開発のプラットフォーム「GA-L」も影響しています。新しいプラットフォームと重量バランスを考えたパッケージによりどっしりとした芯のある走りを実現できたのです。四隅に配置されたタイヤが路面をがっちりと掴み、コーナリングでは踏ん張りながらもフラットな乗り心地、路面の荒れたところや繋ぎ目ではストンとサスペンションがしっかり動き衝撃を吸収、どんな道を走っているのかという路面情報はシートやステアリングから必要なものだけを的確に伝えてくれます。
レクサスLCは感覚的に訴えてくる走行性能を手に入れたラグジュアリー空間を持つクーペなのです。レクサスの「静」と「動」を表現したLCは停まっているとただならぬオーラを放ち、動き出すと弾丸のように鋭く空を切り裂くスポーツクーペとしての一面を見せてくれます。欧州のラグジュアリークーペカテゴリーに勝負を挑んだレクサスLC、他のライバルたちとは違うレクサスならではの世界観を表現し独自の立ち位置を築き上げたモデルです。
ガソリンとハイブリッドどっち?
レクサスの新たな挑戦を盛り込んだLC、ズバリ乗るとしたらハイブリッドモデルの「LC500h」がオススメ。ハイブリッドモデルをオススメする理由は、レクサスらしい「静」とモーターを動力源に使った「動」をバランス良く体現しているからです。新車販売価格はガソリンエンジンモデル「LC500」が1,300万円、ハイブリッドモデル「LC500h」が1,350万円とその差は50万円。税金優遇措置などにより価格差はさらに小さくなります。よって、ランニングコストを抑えられレクサスクオリティを存分に感じられるハイブリッドモデルがオススメ。中古車市場では登場して間もない現時点(2019年2月現在)ではガソリンエンジンモデル、ハイブリッドモデルともにおおよそ1,000万円前後の価格を維持しています。もし購入を考えているのであればガソリンエンジンモデルとハイブリッドモデルを乗り比べてから決断すると良いでしょう。それぞれに良さや魅力があるLCは見て乗って感じるモデルに仕上がっています。実際にLCに乗ると身がスッと収まるシートは安心感と安定感がありクセになるほどです。
レクサスイノベーション
2017年のデビューから現在(2019年2月時点)でまだ約2年のレクサスLCですが、すでに特別仕様車や限定車を販売した実績があります。2019年1月に開催された北米国際自動車ショー(デトロイトモーターショー)ではLCコンバーチブルコンセプトを発表。エレガントなLCのスタイルはそのままにフルオープンになったコンバーチブルコンセプトはオープンにすることを前提にデザインされていたのではないかと思わせるほどオープンスタイルが似合うコンセプトカーになっています。ラグジュアリーマーケットを狙うレクサスにとって足りないモデルはオープンモデルであることを考えるとぜひこのまま市販してほしいモデルのひとつです。
[ライター/齊藤 優太]